はじめに

最近では和服を着る人も減り、印象として着物業界は縮小傾向とみられているかもしれません。
しかし、2017年の着物小売市場規模は、2,880億円となっていて、前年比微減にとどまっています。

問屋(卸売り)や着物メーカーに関して言えば、採算が取れない事業に関して合理化・撤退を進めている企業が増えています。
しかし、レンタルショップ、ネット通販、リサイクル事業を顧客とする問屋には、健闘している企業も見られます。

呉服店や着物ブランド(メーカー)の倒産も多く見られる中、一部の企業の業績が順調に伸びている理由は、いわゆる「インスタ映え」を求めて着物姿になる女性や、着物をレンタルしたり購入したりする外国人観光客を顧客として意識できているかどうかの差といえそうです。

お得意様への売り上げを頼りにしていた、従来のままの「呉服店」では、この先生き残れないということなのです。

2018年の成人式、「はれのひ(株)」で予約していた振袖着物がお客様の元へ届かないという事件はまだ記憶に新しいと思います。
楽しみにしていた成人式に出席できない成人女性は本当に残念な思いをしたことでしょうし、一生に一度の大切な日を台無しにされたご家族の悲しみも想像に難くありません。

さらに、この事件は世間に着物業界の先行きは厳しいという悪いイメージをもたらすという弊害も生み出してしまいました。

そんな業界の状況下でも、日本の成人式文化に深く根付いている着物や、最近伸びているインバウンド需要としての着物など、世の中の動きを読み取ってそれに対応している企業は、さらに業績を伸ばしています。

今回ご紹介する「株式会社 和心」もその1つです。この記事では、同社の概要から代表である森智宏氏について、紹介していきたいと思います。

株式会社和心とは?

着物業界で順調に成長を続けているのが株式会社和心です。

同社は埼玉県川口市の一軒家の2階一部屋を間借りして個人事業として和柄アクセサリーブランド「かすう工房」として創業しました。
デザインフェスタで初売りし、フリーマーケットや路地にて販売事業をスタートします。

翌年にはアクセサリーのOEM事業が始まり、その翌年には渋谷区代官山に初店舗「かすう工房」がオープンします。さらに同年、楽天にてインターネット通販事業開始と、スピード感と同時に安定感のある順調な成長を続けてきました。

今では、運営店舗は67店舗(期間限定店舗除く・2018年6月現在)となり、全てが職人の手作りによる和風ジュエリーの「かすう工房」、日本随一の簪(かんざし)専門店「かんざし屋wargo」、帯留め専門店「おびどめ屋wargo」、オリジナルモダン和柄の和傘専門店「北斎グラフィック」など、”高価格ではなく高感度”な和のファッションブランド総合ショップとして成長を続けています。

そんな株式会社和心の代表者こそ、今回ご紹介する「森智宏氏」です。この記事では森智宏氏の生い立ちから、今後の取り組みについて、ご本人に直接伺いました。

どのようなきっかけで会社を起ち上げたのでしょうか?

経営者の家系だったので、起業は小学生の4年生の時からの夢というか予定でした。
卒業アルバムには大企業の社長になる、と。
『好きで得意で求められている事』という先輩の教えで、18歳の時に今の事業を選びました。

会社を経営していて、これまで一番大変だった出来事はどのような事でしたか?

OEM事業においての納品事故ですかね。
取引先の海外工場で全く違う仕様で上がってきた事です。その時点ですでに納期1週間前でしたので、地獄をみました。

貴社の強みについて教えてください

・超SPA(※)で企画から販売だけではなく、Web制作から店造りまで自分達で行う事です。 
→昨年末には新習志野に物流センターも作り、また最近トラックも購入し、物流部門の自社化も進めて参ります。

※超SPAとは…
一般的に製造小売業を指す「SPA」ですが、和心では店舗施工やWeb制作も自社で行っているため「超SPA」と呼んでいます。(商標登録済)

  • ドミナントネットワーク
  • →京都をはじめとした国内の主要都市/観光地においてドミナント出店(※)を行うことで、お客様の回遊効果を生み、複数の製品と購買機会を提供するビジネスモデルが強みになります。

    ※ドミナント出店とは…
    小売業がある地域に集中的に出店する戦略を、ドミナント出店またはエリア・ドミナンス戦略などと呼ぶことがある。 この出店戦略により、物流や管理、販促などの効率化とコスト削減を図り、商圏内で競合他社より優位に立つことをめざす。

    会社を経営する上で、森様が特に心がけている事などありましたら教えてください

    理念経営ですね。

    「日本のカルチャーを世界へ」と少し偉そうなことを掲げていますが、それに向けて一同邁進しています。

    今後のビジョンについて教えてください

  • 商材開発
  • モノ事業部(店舗運営)でもコト事業部(着物レンタル)でも、商材やサービスをどんどん開発していきます。

    それを既存のドミナントネットワークを利活用することで、お客様のさらなる相互送客を促進し、和心の観光プラットフォームを作っていきたいです。

  • エリア拡大
  • 観光立地が日本中に広がっているので、出店余地が拡大しています。そこにどんどんと攻めて参ります。

  • 海外へ
  • 潮目が変わり外国の方々が日本に来なくなれば、そこで海外へ進出していきたいと思います。

    取材を通じて感じた事

    株式会社和心代表の森智宏氏のお話を伺って参りました。

    40代になったばかりの森智宏氏は、18歳の時に『好きで得意で求められている事』という先輩の教えをヒントに今の業界を選びます。
    埼玉県で間借りした一部屋で、手作りの和風ジュエリー「かすう工房」として起業、その後現在の店舗数67店舗(期間限定店舗除く・2018年6月現在)まで順調に会社を大きくしてきました。

    『好きで得意』だった和風ジュエリー製作からスタートして、『求められていること』を時代に合わせてキャッチしながら経営し、40歳にしてここまでの企業にする経営感覚は、素晴らしいと感じました。

    起業2年目には行っていたOEM事業に始まり、外国人を雇うことや、空間デザイン、店舗の施工、VMD(※)まで自社で行っていることなど、森智宏氏の経営はスピード感があるのに安定していて、取材していても感心するばかりでした。

    また、衰退しつつある印象の着物業界の中でもこのような急成長ができるということは、森智宏氏が和の商品やディスプレイに対する抜群のセンスの良さと『求められていること』を嗅ぎ分ける嗅覚を持っていること、そしてスピーディに行動を起こしていく力があるからだと思います。

    若い経営者がゼロからスタートして成功するという「サクセスストーリー」の中でも、運や勢いだけでうまくいってしまうという不安なものではなく、地に足がついた成長を見守っていくという安心して見ていられるストーリーの途中を見せてもらっているような、爽やかな気持ちになりました。

    ※VMDとは…
    ビジュアル・マーチャンダイジング。視覚に訴えながら、お客様の購買を喚起する、ディスプレイによるマーケティング手法。

    会社概要

    名称
    株式会社和心
    東京本社
    東京都渋谷区千駄ヶ谷3-20-12和心ビル
    業務内容
    商品企画・デザイン・製造、店舗設計・運営、Webデザイン・ECサイト運営・着物レンタル事業運営