一般企業から広尾学園の理事長になられた経緯について教えてください。

以前、私は一般企業で働いており、その後、広尾学園には11年前、経営企画として入職しました。

その年は学園が共学化する前の、女子校時代としては最後の年でした。

当時は、学園の生徒数が減少していて、経営的にとても厳しい時代が続いていました。もう潰れるかもしれない、そういう状況だったために、思いきって校名を変更し共学化に踏み切るなど、新しいことをやらざるを得ない状況でした。

そうした状況を立て直すということで、新しい教職員を採用した時に、私も入職する事になりました。

広尾学園の理事長に就任されてからこれまで一番大変だったことはありますか?

やはり多くの受験生に来てもらうにはどうしたらいいのかということです。

学校ではありますが、私立ですから一般企業と同じで、自分たちで生徒を集めなければいけません。

共学化して広尾学園になると決まった当初は、あまり注目されることもなく、学校説明会をやっても小さな会場ですら埋まことはありませんでした。そんな状況下で、教職員みんながどうしたら受験生に来てもらえるのかと、日々議論しながら、土日も休みなく試行錯誤を積み重ねていきました。

その結果、説明会に参加してくれた保護者のみなさんのクチコミで話題になり、説明会の回を重ねる毎に参加者が増えていきました。ここ数年は一日の説明会に3000人以上の申込があり、受付開始当日で締切るという状態になっています。

やはりブランディングが大事ということでしょうか。
そうですね。今でこそ広尾学園というと知っている方は知ってくださっていますが、10年前はほとんど知られていませんでした。

大企業のようにCMを打つわけにもいかないので、やはり名前を知っていただいて、教育の内容をきちんと知っていただく。実際の教育活動をどんどんレベルアップして、それを丁寧に繰り返し伝えていく。そうした地道な活動が重要だと思います。

広尾学園の強みについて教えてください。

広尾学園はどういった生徒が入学しても、彼らが持った夢を叶える自信を持っています。

というのも、広尾学園は東京の偏差値で言えばトップ10に入るくらいの位置にいますが、そういった学校で3つのコースを持っている学校は他にありません。かつて一般的な進学校が、進学実績を効率よく上げるためには均質、均一の集団の方が都合もよかったのかもしれません。

進学校というと、「東大へ、京大へ」と言われがちですが、広尾学園では、何をするために大学へ行くのか。大学でどういったことを究めたいのか、そのための大学を自分で判断して進学してほしいのです。

例えば入学する際に“医進・サイエンスコース”で「将来医者になりたい」「研究者になりたい」といって入学してくる子が、高校に進学する時に、「やっぱり弁護士になりたい」と自分の目標を変えることだってあり得ます。ならば本科コースへ進学しようとなります。

それが自然なのだと思います。中高の6年間、一線で活躍する人々と出会って話を聞いたり、自ら様々な体験を積むことで、自分はどう進むべきか揺れるものです。

海外で研究者になりたいという子には、インターナショナルコースの先生が的確なアドバイスをできますし、逆にインターナショナルコースや本科コースの生徒が医療を目指すなら医進・サイエンスコースの先生がバックアップしてくれます。

そういった指導体制が広尾学園の一番大きな強みだと思います。

3つのコースが連携しているということですね。
そうですね。広尾学園という学校の中の3つのコースなので、分担するのではなく、各コース間では協力・連携をしています。

他のコースの生徒だから違うコースの先生が教えないといったことはなく、コースを超えて協力し合ってますので、そういった意味では先ほどのように目標がどのように揺れてもバックアップすることができます。

3つのコースの特徴について教えてください

医進・サイエンスコース

“医進・サイエンスコース”では、医学部および、最先端理工学部への進学を希望する生徒が対象です。

大学レベルの研究・実習環境を提供しており、通常授業以外にグループ毎の研究活動も行います。中1から「理数研究」という授業で、数学・化学・生物など十ほどのグループに分かれて最新の実験や研究に触れ始めます。

その内容も大学以上で扱うような高いレベルのものであり、「研究」をそのまま教育に取り入れた形です。

インターナショナルコース

“インターナショナルコース”では、国語と社会の一部をのぞいた主要5教科の授業を全て英語で行う、アドバンストグループ(AG)と、基礎から英語力を伸ばすスタンダードグループ(SG)に分かれています。目的は、海外の名門校なみの英語教育環境を提供することです。

本科コース

“本科コース”では、高校2年進級時に、文系・理系どちらかを選択する事になります。中学1年生の時からキャリア教育プログラムでさまざまな分野の専門家と出会い、体験することを通じて、自分の本当にやりたいこと、自分の力を発揮できることを見つけて行くコースです。

今後のビジョンについて教えてください。

大きなこと言うようですが、本当にうちの教職員は日本の教育とか世界の教育を変えていこうと本気度をもって取り組んでいます。

広尾学園も既存の教育を変える存在になりたいという目標があって、そういう方向へ向けたビジョンを描いています。一言でいえば、これからの時代にふさわしい教育を創って行く学校であり続けたいと思っています。

学校というのは何かを決める際に、説明会でこう説明したので、1年間は変えないとか、もっと言えば6年間は変えないということが結構あります。

すごく大事な部分ですが、この時代で6年間何も変えないとしたら逆に大きな問題だと思います。1年間でも場合によってはちょっと長すぎるくらいです。普通の企業でしたら、時代に合った変化、改革のスピードを速くなければ生き残れません。

そういったスピード感からは、学校という組織は取り残されていると思います。もう少し時代に合ったものを積極的に取り入れたり、より優れたものが見つかったら、きちんと説明をして、1年も待たずに新しいものに変えていく。そういったスピード感を持って新しい教育をやっていきたいというのが、広尾学園が考えているビジョンです。